エンブレムはアイデアではない

五輪エンブレム騒動については、内容はともかく既に多くが語られていますが、ようやく当事者筋からのコメントが出てきました。

五輪エンブレム当初案「劇場ロゴと似てない」 審査委員 (朝日新聞デジタル2015年8月26日記事)

これまで散見された議論と同様に、審査委員は今回の争点となった五輪エンブレムとベルギーの劇場のマークについて「現在の案では考え方も成り立ちも異なり、違うものといえる。」と説明しています。

また、上記の記事では「『似ているのではないか』という問題になると、多くの人の意識は、形に集中しやすい。今回、見る側とデザイン界の潮流のギャップが現れた」との記述もあります。

ところで、著作権法は創作的表現を保護し、商標法は知覚の客体(標章)に化体した信用を保護するとされます。今回の場合、表現・知覚の客体とは、視覚に訴えるもの、すなわち「(色彩も含めた)形」です。

そして、法による保護は、原則として、その「形」の創作の裏付けとされる論理付け、つまり説明を受けて論理的に了解される、抽象的な価値については感知しません。「考え方」や「成り立ち」は、あくまで外観として看取されなければ意味が無い、とされるのです。

この考えに基づけば、上記記事における見解は、「見る側とデザイン界の潮流のギャップ」のみならず、法の予期するところからも外れている、ということになります。

ただし、その外観の「似ている・似ていない」の判断については、著作権法・商標法それぞれに、恐らく一般の常識には馴染みにくいであろう独自の基準があります。それら基準に照らして、今回のエンブレムが権利侵害を構成すると直ちに決めつけることはできない、と言えるでしょう。

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