肉を斬らせて骨は断てるか

五輪エンブレム問題について、現行エンブレム(以下「標章」と称す)の「原案」とされるものが、以下に報道される通り、公開されました。

五輪エンブレム原案公表 組織委、デザイン独創性強調(日本経済新聞2015年8月28日記事)

コンペ応募者が標章の創作段階において全世界の商標権・著作権を精査することは現実的ではなく、審査段階にて精選した一部の作品のみが対象として調査を受け、その結果、標章にある程度の修正がなされることは妥当と考えます。

今回の対応は、著作権侵害の回避及びそれにまつわる疑惑の解消が一義であるから、依拠性を否認する証拠として、成果物とその創作過程を提示すればよい、というものでしょう。一応の筋は通ってます。

となれば、反論の初期において現行標章に準拠し、さらにこれに基づく「コンセプト」を延々と説明したのは悪手だったでしょう。

え? じゃあエンブレムの「コンセプト」は原案にはなかったってこと?(「山形浩生の「経済のトリセツ」」2015年8月28日エントリー)

一例として上記ブログに指摘されるように、現行標章の外観上の特徴及びその「コンセプト」が創作段階には存在せず、侵害回避を契機に生じたことが明らかになったからには、創作の初期から採用・公開までの標章の同一性に疑義が生じてしまうからです。

これは、商標登録出願に喩えれば「補正による要旨変更」に他ならず、通常なら出願日繰り下げ扱いとなり、当初の先願権を喪失します。つまり補正は別個の商標を出願したのと同様の扱いとなるのです。

権利侵害回避を目的とするために当初のデザインの特徴が失われてしまったとあれば、創作の意義に照らして本末転倒の誹りは免れないでしょうし、また、初期の反論の意味は何であったのか、との疑問が生ずるのも仕方ないところだと思います。

ただ、ここで持ち出した「標章の同一性」なる基準が、五輪標章の採用基準にどのように関わっているかは知る由がありません。あくまで結果から判断するとして、問題は無い、ということなのでしょう。

傍目から見れば肉を切らせて骨を断つ、を地で行くと思える今回の対応、騒動を無事決着させることができるでしょうか。

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